点滴について調べていると出てくる言葉、リンゲル液
なんとなく聞いたことあるけど説明できるか?と言われると微妙…ってかたも多いのでは?
今回は補液の基礎、リンゲル液について解説します✏︎
(基礎なのに③という…笑)
についても以前解説していますのでリンクからどうぞ!
今回は短めです☺︎
リンゲル液とは?
簡潔にいうと「動物の細胞外液の電解質組成に近づけたもの」です
生理食塩水にはNa +とCl –が含まれていますが、それに加えてカリウム(K+)とカルシウム(Ca2+)を足して細胞外液に近づけています。
ただし以前よく使われていたリンゲル液と現在使われている乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液は少し違いがあります。
以前のリンゲル液にはCl-が多く入っており、HCO3-が含まれていませんでした。
現在はCl-の含有量を下げるために乳酸、酢酸、重炭酸イオンを入れており主にそちらが使われています
生理食塩水との違いとは
生理食塩水の特徴をひと言でいうとナトリウムを人間の体液の浸透圧と同じにしたものです
対してリンゲル液は血漿の電解質組成に近づけたものです
(※生理食塩水は輸液の溶解や器具の洗浄にも使われますが、今回は輸液の説明に限定します)
(※ここでのリンゲル液は乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液をさします)
〈生理食塩水〉
生理食塩水の組成は塩化ナトリウム(NaCl)0.9%です。
1000mlあたり9gの塩化ナトリウムが入っています
0.9%は人間の体液(血清)の浸透圧と同じです
塩化ナトリウムのみ入っている=カリウムが含まれていないので、心臓や腎臓の状態がわからない患者さんに対しても使用できます。
しかし大量の急速投与は浮腫、アシドーシス、高ナトリウム血症などを引き起こすため注意が必要です。
〈リンゲル液〉
リンゲル液は塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物を含有しています。
ナトリウム濃度が生食と比べると低いため、大量投与時に代謝性アシドーシスの悪化を防いでくれます。
そのため出血性ショックや敗血症性ショック、重度の脱水、熱傷による脱水などの急変時や手術など細胞外液の喪失時にはリンゲル液が用いられます。
リンゲル液の種類
リンゲル液は添加したものにより3種類に分けられます。
リンゲル液の主成分は塩化ナトリウム、塩化カルシウム水和物、塩化カリウムです。
そこに乳酸イオンを添加したものが乳酸リンゲル液
酢酸イオンを添加したものが酢酸リンゲル液です
この2つは血漿に含まれるHCO3-(重炭酸イオン)が含まれませんが、乳酸イオンと酢酸イオンが体内で代謝されHCO3-となります。
乳酸リンゲル液と酢酸リンゲル液の違いは代謝場所の違いです。
乳酸リンゲル液はほとんどが肝臓で代謝されます。
それに対して酢酸リンゲル液は肝臓に加えて筋肉(全身)でも代謝されます
乳酸リンゲル液:ラクテック、ハルトマン、ソルラクトなど
酢酸リンゲル液:フィジオ、ソリューゲン、ヴィーン、ペロールなど
〈重炭酸リンゲル液〉
乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液は代謝されて重炭酸イオンが生成されますが、重炭酸リンゲル液は初めから重炭酸イオンが含まれています。
その効果として、速やかな代謝性アシドーシスの改善が期待できます
代謝を必要としないため肝機能が低下している患者さんにも使用できます
重炭酸リンゲル液:ビカーボン、ビカネイト
重炭酸イオンが代謝性アシドーシスを改善するメカニズム⇩
代謝性アシドーシスとは、体が酸性に傾いた状態のことです。
酸が排出できない、または過剰に生成されることにより重炭酸イオン(HCO3-)が減少しpHが7.35未満へ低下しています
重炭酸イオン(HCO3-)はアルカリ性なので、足りなくなった重炭酸イオンを補充することでアシドーシスを改善します
まとめ
リンゲル液について理解できましたか?
違いが細かくてわかりづらい部分もあるかもしれません。
よく使う点滴なので、その都度意識しながら理解を深めていきましょう✏︎
