脳梗塞は主に3つにわけられます。
今回はそのうちの一つ心原性脳梗塞について解説します。

心原性脳梗塞とは
その名の通り心臓が原因の脳梗塞です。
心臓でできた血栓が血流にのり脳の血管で詰まったタイプの脳梗塞です
突然発症しほかの2つの脳梗塞と比べて大きな血栓が詰まるため重症化しやすいことが特徴です
原因とメカニズム
主な原因は心房細動です
心房細動によって心臓内にできた血栓が血流にのって脳まで到達し梗塞を引き起こします
心房細動とは、心房内に流れる電気信号の乱れによって心房が痙攣のように細かく震えてしまう病態のことです
全身に血液がうまく送れず心房内の血液が滞り心房内に血栓が形成されやすくなります
その血栓が飛んで脳の血管に詰まることで心原性脳梗塞となります
心房細動がある人は、ない人の約5倍脳梗塞のリスクが高いと言われています
症状
3つの脳梗塞の中では最も重症になるリスクが高いタイプです
小さな梗塞で済むこともあるが、寝たきりまたは死亡例が30%を超える予後不良の病型です
5年間の再発率は約25%、5年生存率40%と言われています
梗塞部位により症状はことなりますが麻痺、言語障害、視野障害、嘔吐、意識障害が起こります
また梗塞が大きく大脳表皮までおよぶと
・共同偏視(目が左右どちらか一方に寄る)
・半側空間無視(左右どちらかの空間が認識できなくなる)
・半盲(左右どちらかの視野が欠ける)
・失語
が出ることがあります
どんな検査をする?
まずはほかの脳梗塞と同じくCTやMRI検査を行い脳梗塞の診断を行います
脳梗塞の治療開始は早ければ早いほどいいためです
詳しくはt-PA療法の記事で解説しています✏︎
脳梗塞であると確認されたら治療を開始し、同時に精査を行い原因を確認します
CT検査は脳梗塞の部分は黒く映ります。
発症して間もないときにはCTには映らないためMRI検査を併用します。
MRIでは発症1時間で異常部分が映る可能性がありますが、CTに映るのは約1日たってからです。
心原性であるかを確認するためには入院時に心電図検査を行います
必要に応じてホルター心電図を、血栓を直接確認するために心エコーを行います
ホルター心電図とは?
24時間装着して心臓の状態を検査します
どの状況で不整脈がでるかを分析するために行います
患者さんがこの検査を行なっているときはトイレやおむつ交換、ケア、食事など動いたときに記録し自覚症状の有無も記録して検査室へ紙を渡します
検査中は普段通り生活しますが、機械は外せないのでシャワーや入浴はできません
治療はなにをする?
発症から4.5時間以内であればt-PA療法を行います(詳細は上記のリンクから)
t-PA療法が行えない(時間が経ちすぎている、適応でない)場合は内科的治療や外科的治療を行います
基本の治療はアテローム血栓性脳梗塞の治療←こちらの記事で詳しく解説しています
心原性脳梗塞で大切なのは心房細動による血栓形成を予防することです
〈抗凝固療法〉
以前はワーファリン(内服薬)またはヘパリン(点滴)しかありませんでした
ワーファリンの注意点として
・採血で投与量の調整が必要
・ビタミンKの摂取を避けないといけない
・ほかの薬剤との相互作用がある
・半減期が長い
ただし歴史も長く安価で腎臓が悪い人でも使用できる利点もあります
最近になり上記以外に4種類の抗凝固薬を使用できるようになりました
・イグザレルト
・プラザキサ
・エリキュース
・リクシアナ
まとめてDOACと呼ばれます
ワーファリンとDOACはいずれもフィブリンの生成を抑制する働きがあります
ワーファリンはビタミンKを阻害、プラザキサはトロンビンを阻害、その他3つはXa因子を阻害してフィブリン生成を抑制します
Xa因子(活性化第x因子)
肝臓で合成される血液凝固因子のひとつです
これが阻害されるとAPとAPTTの両方が延長します
慢性期の過ごし方や看護
急性期の治療の次に大切になるのはリハビリと再発予防です
リハビリは早期から開始し、必要であればリハビリ専門の病棟や病院に移動して継続します
再発予防のために内服管理、食事管理、高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理を行います
また心原性脳梗塞は重症化しやすいため、患者さんとご家族のメンタル面のケアや福祉へ繋げるサポートを行います
病院であればMSW(ソーシャルワーカー)の介入があるかと思います
リハビリスタッフやソーシャルワーカーさんと情報共有をすることが大切です
特にソーシャルワーカーさんはご家族と面談をして今後のことについて話し合っていたりもするので、記録を確認できるといいですね✏︎
まとめ
心原性脳梗塞について解説しました
3つの脳梗塞のタイプの中では大きい血栓が大きい血管に詰まりやすく重症化しやすい脳梗塞です
突然発症するため患者さんもご家族も負担が大きく、救命できてもその後の生活は一変します
治療で終わりではなく、患者さんの生活はそこからまた続いていくので他職種で連携をとりサポートしていけるといいですね!
今回はこれで終わりです☺︎
お疲れさまでした!