脳の疾患に頭蓋内圧亢進はつきもの
切っても切れない関係です
症状がないか注意して観察する必要があります
今回は頭蓋内圧亢進、脳ヘルニアがどのようなものか解説します。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
頭蓋内圧亢進とは
頭蓋内圧亢進とは、その名の通り頭蓋骨内部の圧が上昇している状態のことです
頭蓋内腔は脳実質、脳血液量、髄液量がバランスを取り合い容積を一定に保っています
この3つのどれかの容積が増大し頭蓋内圧が亢進することで起こります
原因として
・脳腫瘍
・脳血管障害
・水頭症
・感染症
・脳浮腫
が挙げられます
どこが圧迫されるかで症状は変わる
・頭痛(早朝、起床時に悪化傾向)
・嘔気、嘔吐(頭蓋内圧が亢進し延髄が圧迫されることで起こる)
・うっ血乳頭
・意識障害
・麻痺
・視覚障害(視野欠損、複視、視力低下)
・言語障害
上3つが頭蓋内圧亢進症状の三兆候と言われています
うっ血乳頭とは、視神経乳頭(視神経が眼球に入るところ)が腫れた状態のことです
初期には発見されないことがあり、眼底検査で発見されます
視力障害には注意して観察を行う必要があります
脳ヘルニアと種類
上記の頭蓋内圧亢進の原因によって頭蓋内圧が異常に亢進した結果、脳組織の一部が一定の境界を超えてしまったものです
主な症状は意識障害、呼吸の異常、瞳孔異常、除脳硬直、徐皮質硬直などがあります
脳ヘルニアは頭蓋内圧亢進が進行した状態のため命に関わり、救命できても後遺症が残る可能性が高いです
そのため予防と早期発見が大切です
頭蓋内圧亢進症状を見逃さず早期に対処できるようにしましょう!
脳ヘルニアにはどこが圧迫されるかで種類が分かれています
・大脳鎌下ヘルニア(帯状回ヘルニア)
・テント切痕ヘルニア
・小脳扁桃(大後頭孔)ヘルニア
テント切痕ヘルニアは中心性(正中)ヘルニアと鉤ヘルニア、上行性テント切痕ヘルニアにわかれています
以下にそれぞれの特徴と症状を解説します⇩
大脳鎌下(帯状回)ヘルニア
帯状回とは⇩この部分(大脳の内側、脳梁の縁に沿って位置する)のことです
前部分は前頭葉の一部です
機能は感情、痛み、注意、自律神経の制御等

帯状回ヘルニアでは呼吸抑制などの重篤な症状は見られません
進行すると嘔気嘔吐、意識障害、麻痺、視野障害、頭痛など圧迫された部位による症状が出現します
無症状なこともあります
テント切痕ヘルニア
・中心性(正中)ヘルニア
大脳の病変部が圧迫されて間脳や側頭葉に飛び出たタイプのヘルニアです
初期には傾眠、不穏、ため息の症状が出ます
進行してくると意識障害、チェーンストークス呼吸、縮瞳などの症状が現れます
・鉤ヘルニア
こうヘルニアと読みます✏︎
かなり緊急性の高い脳ヘルニアです
側頭葉の一部が小脳テントを越えて脳幹を圧迫するタイプの脳ヘルニアを指します
症状は意識障害、対光反射の消失(瞳孔散大)、除脳硬直、動眼神経麻痺、片麻痺が起こり生命の危機に直結します

早期に圧迫の原因(腫瘍、出血など)を取り除く必要があります
中心性ヘルニアと鉤ヘルニアは上から下へ圧迫されるので下行性ヘルニアに分類されます
・上行性テント切痕ヘルニア
テントの下部の圧が亢進し、小脳の一部が押し上げられてテント切痕を超えるタイプのヘルニアです
小脳の病変が原因で起こり、意識障害、麻痺、呼吸異常、瞳孔異常の可能性があります
テント切痕とは?
脳の下部と大脳を仕切っている小脳テントの開口部のこと
テントとは大脳と小脳を仕切る硬膜のことです
小脳扁桃(大後頭孔)ヘルニア
脳の下部にある小脳扁桃が脳の圧迫によって頭蓋骨の開口部から下に押し出されている状態。
延髄が圧迫されると呼吸抑制が起こります。そのほか意識障害、心拍数や血圧の異常が起こる可能性があります。
脳ヘルニアの治療は?
減圧のための治療を行います。
血腫除去術、腫瘍摘出術:脳を圧迫している原因を直接取り除くことができます
脳圧降下薬:脳浮腫による脳圧を下げる薬(マンニトール、グリセオール)や利尿剤を使用します
開頭減圧術:頭蓋骨の一部を外し脳の圧迫を軽減させます。脳浮腫が軽減したら頭蓋骨を戻します(頭蓋形成術)
また、脳ヘルニアによって起こる症状に対する治療も必要です
人工呼吸器を使用して呼吸管理を行ったり、点滴の管理を行います
脳ヘルニアではクッシング現象に注意
クッシング現象とは、脳ヘルニアの初期におこる血圧上昇と徐脈を指します
メカニズムは
頭蓋内圧の急激な亢進
↓
脳血流量が低下し脳が酸欠になる
↓
酸欠解消のため脳に血液を送ろうとする
↓
血圧上昇
↓
血圧上昇を抑制するため心拍数を下げる
↓
除脈
クッシング現象に注意していることで頭蓋内圧亢進の早期発見につながります。
脳ヘルニアは発症すると重篤な後遺症を残したり命を落とすこともあるため予防することが大切です。
血圧上昇と徐脈に注意しましょう⚠️
終わりに
今回は長くなりましたね(・・;
しかし脳疾患の患者さんを受け持つうえでかなり大切な項目です。
正直わたし自身もかなり勉強になりました。
特にクッシング現象を発見することは患者さんの予後に大きく影響します。
この記事が皆さんのお役に立つことを祈っています!